江戸名所図会

江戸を知るための資料としては、第1級の書と言って過言は無いだろう。
1780年に出された「都名所図会」に触発されて、神田の町名主であった斎藤長秋(幸雄)が書き始めたもので、その死後、息子の莞斎(幸孝)、孫の月岑(幸成)の三代にわたって書き続けられ、1834年から36年にかけて出版された。また、江戸の町を今に伝える挿画は、長谷川雪旦によって描かれたもの。江戸とその近郊の名所を、実際に訪れて描かれたもので、とても写実性に富んだものとなっています。そのため、200年ほど前の江戸の街並みや生活、風俗を知る上では、とても価値の高いものなのです。
江戸を舞台にした時代小説を手がける作家にとっては、「江戸切り絵図」とともに必需品ともいえるもの。我々読み手も、小説に出てくる地名や寺社仏閣、橋などを、この江戸名所図会を見ることによって、よりその情景が鮮明に浮かんできて楽しいものです。残念なのは、今の東京では、江戸名所図会に描かれた場所のほとんどが失われてしまったことです。