高尾山

言わずと知れた東京都民のオアシス。東京にあって、貴重な自然を残す数少ない場所です。特に有名なのがスミレとブナ。スミレは、日本に自生する200種類余りのスミレの内、約40種類(一般には15種類ほど)を見ることが出来るという。今の季節、高尾山へ行けば、数多くのスミレに出会うことが出来ますが、近年、盗掘により減少しているのが悲しい。また、日本海側の標高500〜1000mに自生し、太平洋側では更に高い場所に生えるブナが、なんと高尾山にも数本自生しているのです。どうも、江戸時代の寒冷期に発芽したものらしく、今の温暖な気候では、このブナからの世代交代は無いということです。となると、今生えているブナは大変貴重なものなのです。
もちろん、他にも多くの貴重な動植物が暮らす高尾山ですが、今、最大の危機を迎えています。目の前まで、圏央道の工事が迫ってきているのです。計画では、高尾山にトンネルを掘ることになっていて、多くの自然が失われるのは間違いない。すでに、谷を隔てた後北条氏により築かれた八王子城跡にはトンネルが開けられてしまい、井戸が枯れたり、滝が消失するなどの水系の変化が現れている。我々の体に張り巡らされた血管と同様に、山にも水の流れが複雑にあり、穴を開ければ水の流れが変わるのは当たり前。今まで水が湧き出ていたところが枯れれば、その周囲の環境は大きく変わり、植生や動物の行動範囲も変わってきます。これは、高尾山だけの話にとどまらず、その下流域や周辺の環境にも影響を与えるのです。
日々の生活の中で、圏央道が必要だと感じる人がどれだけいるのでしょうか。圏央道がなければ、生活が成り立たないなんてあり得ない。無ければないで、まったく問題ないはず。もちろん出来れば利用する人もいるでしょう。しかし、貴重な自然をわざわざ壊してまで作る必要はない。便利さの追求、経済優先の社会はあまりにも虚しいと思う。